日本列島の地質と地質環境

プレートテクトニクスからみた日本列島

私たちが暮らす日本。その足元を「地殻」という視点で見てみよう。実は日本列島は、世界に類例のない、複雑な地殻の上に作り上げられている。

日本列島は、地球を覆っている十数枚のプレートのうち4枚のプレートの衝突部にあって、世界的にも活発なサブダクションゾーンのフロントに位置している。この列島は北米プレートとユーラシアプレートの2つの大陸地殻にまたがり、さらに太平洋プレートあるいはフィリピン海プレートの沈み込みによって2方向から強く圧縮されている。
最近注目され始めた房総沖と伊豆半島付近の2ヶ所のトリプルジャンクションの存在は4つのプレートがぶつかり、せめぎ合う場として世界に類例がなく、日本列島がいかに複雑な応力場に支配されているかを示している。
マグニチュード7以上の地震は世界中でこの90年間に900回ほど起きているが、そのうち10%もの地震が日本で起きている。マグニチュード8クラスの巨大地震も日本海溝や 南海トラフといったサブダクションゾーンに集中し、ここでのプレートの衝突がいかに激しいかがわかる。
さらに太平洋プレートの日本列島下への活発な沈み込みは、日本列島を世界でも有数な火山列島にしている。
このような日本近海のプレート運動は、島弧に強い歪みを与え世界でも有数の地震多発帯、火山活動多発帯といった自然災害の場を形成し、また地殻の上昇も加わって、非常に脆弱な地盤をもつ日本列島を作り上げている。

日本の地形の特徴と狭い国土利用

面積38万km2の国土を持つ日本。しかし、そのほとんどが山地などであり、1億2000万人の人々が安心して住める場所はわずかしかない。災害と隣り合せの開発が進む。

神奈川県横浜市市内の急傾斜地 (建設省土木研究所砂防部資料から引用)

日本列島の地形は、「山地」、「丘陵」、「台地」、「低地」および「内水域など」の5つに区分され、そのうち「山地」と「丘陵」の占める割合が約73%であることから、島国であると同時に山国であると言える。
これらの地形は、豪雨や地震など自然の影響により変化しており、その過程において数々の自然災害が発生している。また地形変化は、人口増加や都市化にともなって、人為的な丘陵・台地の斜面造成、さらには低地の発展とともに、その延長上にある海岸の埋め立て造成へと拡大してきた。わが国では狭い国土の有効利用として、水害や土砂災害などに対してリスクの高いところに、あえて開発が進んでいる。

山地では

日本は山地が多く、その上不安定な地形・地質となっている。土木工事等を進めるにあたっては、断層や地すべり、火山地帯など、常に困難が存在している。

グリーンタフ地域の泥岩の膨張 上越新幹線・中山トンネル

日本列島は、活発な地殻変動により山地が発達し、温帯多雨という気象条件により著しい浸食作用を受け、複雑で不安定な地形・地質によって形成されている。そこには土木地質的観点から困難な地質条件が存在する。
その中の1つ、膨張性地質は、押し出し量が大きく、強大な地圧が作用し、大変形を生じて崩壊に至ることがある。代表的な膨張性岩石としては、グリーンタフ地域の泥岩や温泉余土などの熱水等による変質岩があげられる。膨張は、トンネル工事中だけでなく、完成後に問題を継続することがある。

平野では

わずかな平野に人口が集中している日本。だが、その平野すら安定した地質ではない。その特徴や問題点を見てみよう。

わが国の平野には、東京、名古屋、大阪などの巨大都市が形成されているが、地質年代的に新しい沖積層で構成されていることから、地盤工学上の問題を多く抱えている。平坦な地表の下には起伏に富んだ埋没地形が隠れており、そこを埋める沖積層の厚さは一様でなく、軟らかい粘土やルーズな砂が主体であり、概して軟弱であることが特徴的である。
地下水位下に分布するルーズな沖積砂層では、地震時の液状化現象が問題になる。また、基礎杭を支持する基盤層が極端な凹凸を呈している場所もあり、同じ敷地に打設した基礎杭の長さが10m以上異なることもめずらしくない。
地盤の不同沈下、地震時の液状化現象など、平野部の地下には、建設工事を行う上でさまざまな罠が潜んでいるのである。