日本列島の地質と地質環境

日本と欧米の地質

日本と欧米の地質を比較してみると、日本の複雑さ、不安定さが浮き彫りになる。その違いを見てみよう。

日本列島の地質は、赤色系統の花崗岩をはじめ、火山岩類および堆積岩類がモザイク模様をなして複雑に分布し、多くの断層や活火山が存在する。これに対して欧米の地質は、各地質の1ユニットが広く分布し、断層が少なく地質構造が単調で、安定した大陸地塊を形成している。
同じ高密度な経済活動の中心地域でありながら、西ヨーロッパ・北アメリカ東部の地形・地質は安定しているが、日本はとても不安定であるという大きな相違点が存在している。

海底トンネルの比較

日本と欧米の代表的な海底トンネルを例に、地質を比較してみよう。ここでも、日本の地質の特徴が明かになる。

青函トンネルと英仏海峡トンネルの比較
  青函トンネル 英仏海峡トンネル
長さ(海底部分) 53.85(23.3)km 50.5(37.6)km
最大水深 140m 60m
最大土被り 100m 40m
地質 第三紀火山岩、堆積岩 中生代チョーク
施工性に関する地質条件 割れ目、断層などが多い湧水多量 おおむね均一、割れ目少ない湧水多量
掘削方法 主として在来工法(一部TBM) TBMシールド
トンネル構造 本トンネル(複線1本)+海底部のみ先進導抗作業抗 本トンネル(単線2本)+全長サービストンネル
工事期間 24年(1964~1988年) 11年(1984~1995年)
英仏海峡トンネルの地質断面図 (比較的単純な地質構造で地質の連続性は良い。)
青函トンネルの地質断面図 (断層破砕帯が多く複雑な地質分布になっている。)

青函トンネルは、1920年代の弾丸列車構想以来、1954年の洞爺丸事故を契機として1964年着工し1988年に開通した。青函トンネル部の地質は、第三紀火山岩・堆積岩が多くの断層により切られ、硬軟の変化に富む複雑な地質状況である。施工に際しては、多くの異常出水や膨張圧などにより難工事となった。
一方、英仏海峡トンネルは、層厚20m程度の中生代白亜紀のチョークマール層に沿ってルートを計画・建設された。ヨーロッパの安定した連続性の良い地質条件をうまく利用した例である。特筆すべきことは、海峡の水深が浅いという条件にも恵まれたが、このチョークマール層を把握するため、実に140本以上の海底ボーリングを実施し地質の相互関係を正確に確かめたことである。

日本とヨーロッパの岩盤状況

強い地殻変動を受け、層や割れ目が密な日本の岩盤、風化も進みヨーロッパの岩盤と大きな差を生じた。

氷河による浸食で風化帯がほとんどない北欧の山地(ノルウェー)
本州北端尻屋崎海岸に露出する石英閃緑岩

現在の岩盤は、氷河の影響も関係して形成されている。
北ヨーロッパや北アメリカの主要な地域は、寒冷期には広く氷河に覆われていた。氷河は移動するときに、その底面に分布する地質を削剥したため、氷河の融けた後には新鮮な岩盤が露出することになった。また、これらの地域は大陸の安定地殻であるため、岩盤の割れ目が少ない。
日本の場合も寒冷期に氷河があったが、高山の山頂部に限られたもので、大部分の地域で岩盤は長期にわたる風化作用を受けた。また、地殻変動により地質が複雑で、断層や割れ目が密に発達することが日本の岩盤の特徴といえる。これらの結果、風化作用は一様に進行せず、写真に見るように極めて不均質な岩盤状況が形成された。これが、土砂災害や切土法面の不安定化を招いている。